石巻市の現在の高齢化率は、日本全体の約15年後の予想の数値です。
震災前後の3年で要介護者は20%増加(日本全体では13%増)。
核家族化、共働き世帯が増え、「仕事」と「介護」と「家庭」の両立に
直面する人が増えています。
そこで、11月22日、石巻商工会議所会館を会場に、「仕事と介護の両立支援セミナー」を開催し、会場に集まった約30人のみなさんと、どのように「仕事」と「介護」と「家庭」の両立をしていくかを一緒に考えました。
前半は、ゲストである「もし明日、親が倒れても仕事を辞めずにすむ方法」の著者であるNPO法人「となりのかいご」代表理事の川内潤さんの基調講演からスタート。
川内潤さん:
実家が介護事業会社であったこと、高校2年時のケガによる車いす生活を体験したことから、介護に興味を持ち、福祉・介護の世界を志すことに。ITベンチャー、外資系コンサル会社を経験後、在宅・施設介護職員をする中で介護の過酷な現実に直面し、どうにかしたい、と「となりのかいご」を設立。企業や地域での愛護セミナーや個別相談サービスを提供し、だれもが自然と介護に向き合える社会を目指す。社会福祉士、介護支援専門員、介護福祉士。
介護の世界でお仕事をされる中での様々な方との出会いから、
「大事な家族の介護をがんばりたい、という気持ちは大事だが、
それを家族だけでやることが負担になる可能性もあるのだと思います。
仕事と介護を天秤にかけない、両方ともとることが、上手くいく秘訣になったりもするんです」と話す川内さん。
はじまってすぐながら、ここでグループをつくって話し合いを!とのご提案。
以下の2つのお題でワークショップが行われました。
① 家族の嫌なところで、「残念ながら自分も似ているところ?」は。それは、「誰の・どんなところ」ですか?
② <もし>その家族を介護しながら仕事と両立するときの不安はどんなことですか?
「人に話す」ということの大切さ。
意外と日々の中で、不安などを話すことはないのではないでしょうか?
実は、話すということで「不安や悩みが整理できる」こと。また、そのために「話をしやすくなる雰囲気づくりの大切さ」をこのワークショップで伝えたかったという川内さん。
実際、最初は初対面の方も多い中ぎこちなさもあった会場ですが、2つ目のテーマに移るころには、深刻なテーマながらに共通する思いなどもあったのか会場の空気は柔らかくなっていました。
川内:介護というのは、自分の親が老いによって変化していくのを見る、というなかなか自分の気持ちが揺さぶられることです。なので、自分の中に収めておくことはなかなか大変なことですが、日ごろから自分の日常を大事にしておくことで、介護のときの姿勢も変わってくるんです。
子供にしかできないこと
川内:家族だけで介護をしてしまうと、客観性がどんどんなくなり、上手くいかなくなってしまう可能性があります。100人いれば100通りの介護の形が。どのような選択をしても後悔が残る可能性はありますが、話せる仲間をつくっていくことで後悔を少なくすることはできるはずです。身近な人たちはもちろんですが、介護スタッフという人材もぜひ活用してください。
介護スタッフは「介護という仕事を通して本人の笑顔や日常生活を支えるプロ集団」です。ぜひ、介護の作業はプロにアウトソーシングして、家族にしかできない「愛情表現」をする余裕を持つことで、背負いこまず、自分ならではの介護がつくっていけるはずです。
介護とお金
また、介護に直面した際に避けては通れないのが「お金」の問題です。
川内:介護生活は、平均して4年7か月は続くと言われます。無理な資金計画を立てないためにも、収入を維持できるよう職場に相談したり、親の収入や貯金、家族の負担金額を把握し、その中でも無理のない介護サービスや老人ホームの選択をしていくことが必要となります。高ければいい、多ければいい、とは限りません。そのためにも、余裕を持って相談し、しっかり選ぶことが大事になるのです。
というところで、前半の川内さんのご講演は終了。
次回に続く。