りぷらすのブログ

介護領域の社会的課題の解決を目指す

【仕事と介護の両立支援セミナー】を開催しました(後半)

後半は「企業が実践できる効果的な両立支援策」と題してトークセッションが行われました。前半でもお話しいただいたNPO法⼈「となりのかいご」代表の川内さん、そして、株式会社「国本」代表取締役の引地豊さんをゲストにお迎えし、りぷらすの橋本がモデレーターをつとめました。

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引地:当社は、廃棄物の収集と処理を行っています。現在、50名弱の社員がおり、半分くらいは徐々に介護が必要かなぁという実感があります。そんな中、2年ほど前に、一人の社員の母親が認知症になりました。母一人、子一人で介護をしなければならず、いつの間にか会社に出て来られなくなってしまったんです。本人もどうして良いか分からない、という状況だったので、とりあえず何ができるか考えるためにも、社員のところに行ってみました。

そんな、引地さんの社内での体験談からスタートしたトークセッション。この体験をもとに、引地さんは、社員のみなさんに、より介護の問題を自分ごとにしてほしい、とりぷらすの橋本を呼んで講演会を開いてくださったことも。講演会をきっかけに、会社としての考え方や応援しますよ、という姿勢が社員のみなさんにも伝わり、現在では介護に加えて、育児も考慮に入れた、働き方の模索を続けているそうです。

 

介護の相談を実際にできる会社は多いのか?

川内:まだまだ多いとは言えないと思います。だからこそ、自身のような人間が入る価値があるのではないか、と思っています。個別相談をしていると、介護が自分のキャリアの足かせになるのではないか、と思っている人も少なくはありません。なので、介護に関して相談できる環境の大切さをまずは認識してもらわないといけない、と思っています。

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川内:介護のニーズが顕在化していないことも多いです。なので、まずはアンケートをしてみることが大事なのではないかと思っています。将来の介護への不安や、これまでの介護の経験を聞いてみる。介護休暇の使用だけですと、休日や有休、夜間に無理している人たちの頑張りが浮き上がって来ないので、きちんと現状把握することが大事なんです。

厚生労働省が介護に関する従業員向けのアンケートのテンプレートを作っているので、それを活用することもオススメです、と川内さん。意外なところに介護で苦労をしている人がいることが浮き上がって来たりもするのだそうです。

厚生労働省の仕事と介護の両立支援「実態把握調査票」テンプレートはこちらから
[実態把握調査票(Word形式)]

 

マネジメント層の理解の重要性

川内:マネジメント層の人が、ご自身のご家族が介護の必要に迫られ、今までの振る舞いを反省するというケースもあります。社内のそういった立場の方々に理解や見識があることが、マネジメント力に大きく反映されると思っています。

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明日からできること

引地:会社の中でのかかわりでいえば、気軽に声をかけることだと思います。普段のコミュニケーションが無い中で「相談してこなかったじゃないか!」と後々なってしまうことは避けられるはずですから。

川内:これまでにも例をあげましたが、アンケートをしてみるのが良いのではないかと思います。組織としての取り組みを考える起爆剤になるはずです。そこにふたをし続けてしまうと、一朝一夕にできない介護支援策に取り組むには手遅れになってしまうんですよね。早めの対応が人材の維持コストなどの軽減にもつながるはずです。まずは、数を把握できれば良いので匿名で、自由記入欄なんかも作ってみてはどうでしょう。「休みたい」と書く人もいるかもしれないですが、それをそのまま受け止めるわけではなく、一意見として受け止め、会社で出来ることを考えていく感じです。


介護休業制度を上手く使うには?

川内:厚生労働省が出している3つの大事なタイミングがありますので、参考にしてください。

 

1.ケアマネージャーを選定して体制づくりをするタイミング
 ⇒その間、家族で一時介護をすることもあるかもしれないが、それは一時的なこと。
2.老人ホームを選ぶタイミング
 ⇒インターネットで選ぶより、1軒1軒訪問して選ぶのが良い。
3.余命宣告を受けるタイミング
 ⇒そこで自分が家にいるから、と全ての介護サービスを切ってしまう人もいるが、目の前で命を全うする家族に寄り添うだけで相当自分の気持ちは削られてしまう。なので、寄り添うことに全てを費やすべき。

 

最後にお二人から

引地:経営者として試され時ではあると思っています。社員が安心して働き続けるためには、売上や利益と同様に介護との両立について考える必要があると思いますので、それをクリアしないと、人が集まる会社にならないのではないかと。自身もまだ修行中の身ではありますが、一緒にがんばっていきたいですね。

 

川内:自身はコンサルから福祉介護の仕事に移る中で、自分自身が自然体でいようと思えるようになりました。それは、人を支えるためにそれが必要だと改めて実感したからです。介護においてはトラブルも多い中で「一人一人が自分らしくいられること」が大事なのではないかと。いろいろな事を犠牲にして進んでいくことも企業には必要ではありますが、まずは一人一人が健康で仕事に取り組めるということが大事です。介護は必ずしも上手くできるものではありませんので。完璧に仕事をできてきた人こそ、介護が上手くできないこともあるんです。上手く力を抜けている人の方が、良い関係性を構築で来ていることもありますからね。介護を上手くツールとして使ってもらえたらいいな、と思います。

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りぷらすは、2年近くに渡って仕事と介護の両立に取り組んではきたが、まだまだ発信しきれていないところもあるかと思います。今後とも、今回のセミナーで皆さんからいただいた感想なども踏まえ、取り組みを改善、継続してまいります。

 

*自分ごとかも?と思ったら*
厚生労働省が用意しているチェックリストで客観的に今を見てみる
【介護の予兆を早めに発見するチェックリスト(「となりのかいご」改訂版)】
※「青」に3つ以上チェックが入るのであれば、もう相談した方が良いタイミングです。

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◎地域の「地域包括支援センター」に電話して話をしてみる

 

 

 前回の記事はこちら

replus.hatenablog.jp