東日本大震災を契機に宮城・石巻に拠点を移し活動を続けてきた橋本大吾さん。
本記事では、一般社団法人りぷらすの代表理事である橋本さんのこれまでの取り組みや大切にしている想い、また、今後に思い描くことなどをインタビュー形式で紹介します。
介護領域の社会課題解決に真摯に取り組み続ける、熱量の裏に秘められたものとはー。
代表理事・橋本大吾さん プロフィール
1980年茨城県鹿嶋市出身。2007年理学療法士免許を取得後、埼玉県の医療法人に勤務。2011年3月に発生した東日本大震災を契機に、宮城県でのボランティア活動を開始、同12月に石巻市へ移住し、雄勝地区・河北地区でリハビリ支援事業に従事。2013年一般社団法人りぷらすを設立、代表理事就任。通所介護事業開始、障害福祉サービスを開始。2014年に住民主体の介護予防事業、2016年に仕事と介護の両立支援事業を開始し、介護領域の社会課題解決に取り組む。
橋本さんのこれまでの取り組み一覧は、記事の後半に掲載しています。
”圧倒的な無力感” から生まれた私の強み
ーー多くの社会課題に向き合い様々なことに取り組まれている橋本さんが、ご自身で感じる「強み」について教えてください。
2011年に発生した東日本大震災。当時、ボランティアとして初めて宮城・石巻の地に足を踏み入れた僕は、目の前に広がる想像を絶するほどの悲惨な光景に圧倒的な無力感を感じました。そして、その日から今日に至るまで、悩み続けながら日々走り続けてきました。
そんな僕が皆さまのお手伝いができるとしたら、働き方や健康経営、医療介護系の人材育成や組織づくり、事業開発や資金調達、災害支援かと思います。
僕自身、創業して9年になりますが、創業当初は自分の思うようにいかず悩んだ時期もありました。しかし、振り返ると人をコントロールしたり多くを求めすぎたりして上手くいかないのは当然です。
自分や仲間を大切にした組織運営に関しては、自分の身をもって多くのことを学んできました。ですので、皆さまには、実体験としての生の声をお伝えできるのではないかと思います。組織内のリソースを活かしてどうマネジメントしていくか、組織内での合意形成や提案の仕方なども得意としています。
可能性を考えるのがライフワークに
ーー橋本さんが経営者として様々なことにチャレンジされる時に、大切にしていることはなんですか?
経営者として色々と挑戦する中で大切にしていること、それは、僕自身が楽しむことです。楽しいことでないと、どんなに良いことであっても継続性に欠けるからです。
世の中には多くの課題が山積していますが、僕は未来について考えてる時にとても喜びを感じます。こうだったらいいなという未来に対して現状を見つめた時に、そのギャップを埋めるために自分には何ができるだろうか、と解決策を考えているととてもワクワクするのです。
新しい価値あるモノを生み出し続けるために
ーー橋本さんが組織づくりの際に大切にされていること、また、どんな仲間と一緒に働きたいか教えてください。
いわゆる「0→1」を得意とする僕は、これまで多くの課題に対して新たな解決策を模索してきました。経営者として新しいものを世の中に生み出し続けるためには、一緒に関わってくれる仲間が、新しい提案をどんどんとできる環境づくりをすることが必要です。
僕が主体となってやっていくのではなく、チームのメンバーが主体的に動いていくことで新しいものが生まれて欲しいなと思っています。
新しい事業、新しい働き方、新しい育成、新しい採用....そうやって新しいものが生み出されることで、より主体的に仕事に取り組めるようになるし、仕事と暮らしが乖離しない豊かな生き方に繋がっていくと思います。
そんな人が多い地域は、より豊かになると思うのです。
だから、どんな仲間とやってくのかは非常に重要ですよね。ビジョンや思いのある人、何事もやり切る人はものすごく魅力的だと感じます。
今後の展望
ーー今後、挑戦したいことや未来に思い描くことについて教えてください。
僕は、「一人一人の可能性が活きる社会」の実現を目指しています。それは、社会においていわゆる生産性の高い人だけではなく、組織の中で動くのが苦手な人も、中途障害や引きこもりの人も、産前産後の人も、若年無業者も、いろんな人が活きる社会です。
そのために必要な様々な資本は、偏在しておりアクセスしづらいのが現状です。僕は、いろんな人に機会が開かれ、資本が循環する地域や社会が必要だと考えます。
そんな社会を創造するため、僕は挑戦し続けます。
震災を機に東北へ来た時もそうでしたが、この先の未来なんて正直、どうなるかなんて分かりません。だからこそ、強い信念を持って進んでいくことが大事だと思っています。
信念を持って行動を続ければなんとかなる。僕はそう信じて、前に進みつづけます。
これまでの取り組み
2013年に設立した一般社団法人りぷらすとして取り組む事業やプロジェクト、橋本さん個人が中心となり活動してきたことを紹介します。
これまでの取り組みをご覧になられて、もし橋本さんやりぷらすに興味を持たれた方はこちらからお問い合わせ下さい。
<りぷらすとしての取り組み>
① 介護障害福祉事業
宮城県石巻市、登米市の2拠点でリハビリ特化型デイサービス「スタジオぷらす」を運営。「介護状態からの卒業」を目指しています。
② コミュニティヘルス事業
介護状態を予防する健康づくりの人材育成を行います。
▶︎ おたからサポーターの養成講座
住民が主体となり健康づくりを推進する取り組みで、2014年に第1回養成講座を開始しました。地域住民が講座を通じてカラダの仕組みと体操のやり方などを学び、地域の集会所や仮設住宅等で参加者と一緒に体操を行いながら、自分自身と地域の健康を守ります。▶︎ きらきら健幸サポーター養成講座
2020年より開始した、みやぎ生協さんと共催している2日間の養成講座です。健康的な暮らしを創る担い手づくりと元気な高齢者を増やすことを目的とし、2日間で理論と実践を学ぶことで地域の中で元気な高齢者を増やすためのサポーターを養成します。▶︎ お茶っこ会
スタジオぷらす石巻店の近隣には集会所的な集いの場がないため、近隣住民を対象とした定期的なお茶会の場所の提供を2017年より開催しています。
③ 仕事と介護の両立支援事業
介護離職を防止し、働き続けられる社会の実現を目指し、仕事と介護の両立に関するセミナーや相談、各種メディアでの情報発信を行なっています。▶︎ リクルートマネジメントスクールでの講習
リクルートグループの異業種交流型研修サービス「リクルートマネジメントスクール」にて、年に2回3時間の講習を行なっています。
▶︎ 購読無料の介護WEBマガジン「ケアマガ」運営
それぞれの立場で体験した介護者の想い、記憶、経験などを当事者の方が手記として綴っています。また、当事者の方をケアマガがインタビューし記事の作成も行います。ケアマガは、介護に関わる方やこれから介護をする方の励みとなることを目的としています。▶︎ ワンコインで参加可能・オンライン座談会「ケアマガcafe」運営
自分もしくは家族が介護中の方、過去に介護経験のある方など、介護に直接または間接的に関わっている方を対象とした、「わたしと介護」について対話をするオンラインイベントです。(参加費:500円)▶︎ 介護の架け橋オンライン
介護をする家族(ケアラー)のための有料オンラインサービスです。「介護学習コース」と「介護相談コース」があり、個人や家族・友人とオンラインで気軽に受けることが出来ます。(内容や料金の詳細はこちら)▶︎ りぷらすレター
月に2回配信している無料のメールマガジン。介護に関わる全ての人の忙しい日常に、ホっと一息つける話題を提供しています。(購読をご希望の方はこちら)▶︎ 法人向けインタビュー企画
仕事と介護の両立に取り組んでいる、または、これから取り組もうとしているという法人様をインタビューし記事を作成することで、企業の具体的な取り組みを可視化し、情報を広げ、仕事と介護の両立および働きやすい組織を増やします。▶︎ SNSでの情報発信
note、Instagram、Twitter、Facebookで仕事と介護の両立に関する情報発信を行なっています。
④ 研修会の企画・運営など
▶︎ リハビリ職のためのSDHの会
SDH(健康に影響を及ぼす社会的要因)について考えるリハビリ職のためのコミュニティを運営。定期的なオンライン講習会やイベント、コミュニティ内での情報共有を行なっています。▶︎ 非営利組織の資金調達
非営利組織のための資金調達に関する情報をまとめ、発信しています。▶︎ インターン募集
定期的にインターンを募集しています。(2021年度インターン募集要項)▶︎ 地域おこし協力隊(募集中)
地域おこし協力隊を募集し、月に1回、高齢者のヒアリングや働く女性のヒアリングを行います。高齢者や女性が暮らしやすい地域となるためにな何が必要かを考えています。
▶︎ 訪問の健康見守り(2016年10月〜2018年5月)
高齢者や介護が日必要な人のサポート、当事者の介護予防、介護鬱の予防、家族のサポートを行います。
⑤ 社内職員育成・福利厚生
▶︎ マネージャー養成講座
目標やチームのポジションの確認、個人のできることややりたいことを増やすためのマネジメントやキャリモデルなどの研修会を通して、マネージャーになるための養成講座を3ヶ月間のコースで実施しています。▶︎ 働き方改革
個人のできることや、やりたいことを増やすためのマネジメントやキャリモデルなどの研修会を実施し、個人の目標を立てます。また、就業規則の見直しも毎年行います。スタッフから働き方に関する新たな規則の提案(例えば子どもと一緒に通勤したら手当が出るなど)も受けつけ、個人の暮らしに根ざした提案や成長に向けた提案を募集しています。
<橋本さん個人の取り組み>
▶︎ ジェンダーについて考える会の運営
当事者やジェンダー・セクシャリティに興味のある人が集まり、定期的な対話や勉強会、オンラインコミュニティを運営しています。▶︎ コーチング / セルフマネジメント
コーチングやセルフマネジメントについて講師とともに学んでいます▶︎ noteサークル運営
2019年〜2021年で、地域医療や介護予防事業に興味のある医療介護従事者を対象に、noteのサークル機能を利用しオンラインサロンを運営していました。
掲載メディア
<テレビ出演>
・NHK あさイチ「介護からの卒業」
・おはよう宮城
・仙台放送「東日本大震災特ベル企画『ともに#40』」
<新聞・雑誌掲載>
・河北新聞「住民主体で介護予防」
・産経新聞「リハビリで介護保険"卒業"へ」
・日経新聞「『卒』介護後もリハビリ」
・復興庁「被災地の元気企業40」
・Forbes Japan「世界に誇るイノベーターたち」
<学会など>
日本理学療法士会地域理学療法フォーラムシンポジスト
など
今後とも、一般社団法人りぷらすをよろしくお願いいたします。